コラム
こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「『太鼓の達人』の革新性と強み」についてお話します。ナムコ(現在のバンダイナムコアミューズメント)によって開発された「太鼓の達人」は、ゲームセンターに行くとほぼ必ずというほど置かれている国民的ゲームです。和太鼓をバチで叩くというスタイルは2001年の稼働開始時からほとんど変わらないまま、家庭用ゲーム機やスマホへ進出しながらも、やはりアーケードゲームとして長く強い人気を保っています。
しかし、このスタイルが採用されるまでにはナムコ社内で多くの反対意見や不安の声が上がっていたといいます。「太鼓の達人」は今でこそゲームセンターに絶対あるものというイメージですが、確かに「和太鼓とゲームセンター」という組み合わせは一見かなり突飛でミスマッチであるように思われます。しかし、試作機を作り、実際にゲームセンターに置いたところ瞬く間に人気に火がついたのです。
「なんでゲームセンターに和太鼓が?」という驚きがプラスの効果となり、テスト段階でも行列ができるほどだったそうです。また、「太鼓の達人」は「お客様の層」も他の音楽ゲームと違っていました。従来の音楽ゲームの顧客層は比較的一人の若者が多かったのに対して、「太鼓の達人」にはお子様連れのご家族やカップルの方々が並んでいたのです。このような新規性や独自性の高さといった点を社内でも買われ、口コミで人気も広まったことから、数百台程度だった製造数もあっという間に倍増しました。
人気が出た理由は見た目のインパクトだけでなく、シンプルなゲーム性にもあります。他の音楽ゲームはより難しくなり様々なテクニックが求められるようなものになっていきましたが、「太鼓の達人」は本物の太鼓と同じように叩くだけという非常に簡単なもの。また、キャラクターデザインなども親しみやすいもので、客層の違いはこれが大きな要因となっていると考えられます。
「太鼓の達人」は登場時からゲームシステムがほとんど変わらないとお話ししました。ですが実は開発部では「太鼓を増やす」、「ドン・カッ以外のスイッチを作る」などスタイルを変更するアイデアも出ているようです。しかし、「気持ちよく音楽を叩く」というコンセプトに当てはめてみたところ、いずれも不適合であるという理由で採用されませんでした。このことからうかがえるように、「太鼓の達人」は登場時から既に完成されたゲームだったのです。「好きな曲に合わせてバチで思い切り太鼓を叩く」体験は日常で簡単にできるものではありません。「他ではできない体験」、「プレイする側も応援する側も楽しめる」という要素はコロナ禍やeスポーツといった当時は予測できなかった・一般的でなかったトレンドにすら耐えてみせました。
こうして「太鼓の達人」の要素を分解すると、どれほど革命的なコンテンツであるかを改めて気づかされますね。