コラム
こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「ファブリーズに見られるマーケティング的工夫」についてお話します。「ファブリーズ」はP&Gが販売するスプレー型消臭剤です。カーテンや布団、リュックサックなど洗濯しにくい布製品に吹き付けることで消臭効果を発揮します。
そんなファブリーズですが、発売当初は「洗いにくい布製品の臭いがとれる」という特性を強調した広告が作られていました。そうすると、これまでクリーニングに出したり手洗いをしたりしなければ洗えなかった製品を手軽にきれいにできるということで消費者の注目を集めました。しかし、消臭の対象を「布製品」としていたため、例えば部屋でペットを飼っているお客様など、日常的に布の消臭を行っている方々にしか人気が出ないという事態が起こりました。
さらに、ファブリーズは1回使うと長時間効果が続くため、使い切るのに時間がかかり、リピートにもつながりにくいという課題があることが明らかになりました。それを受けて、社内で「もしファブリーズが70%の家庭で毎月消費されるとしたら、どういうことが起きるのか」という思考実験が行われました。ファブリーズの使用が掃除機をかける、洗濯機をまわすといったことと同様に習慣化するとどのようなメリットがあるかを考えたところ、「布の臭いは部屋の臭いの主要因であるため、ファブリーズの日常的な使用で部屋全体が臭わなくなる」という結論が出ました。
これを踏まえて、ファブリーズの広告で打ち出す特長が「部屋の臭いをとって快適な空間にする」に変えられました。「料理の臭いが布について、その布のせいで部屋が臭う」、「汗の臭いが布につき、その布のせいで部屋が臭う」、「そこでファブリーズ」といったメッセージを含むテレビコマーシャルが繰り返し流されました。そうして、「部屋の臭いの原因は、布製品の臭い」、「そのためにファブリーズを使おう」という考えが生活者の間で徐々に浸透していき、P&Gはファブリーズを習慣的に使う消費者を獲得しました。
P&Gは「部屋の臭いをとりたい」というニーズを持つ人たちに対して、その原因の大半は布からだと知らせることにより、「布の臭いをとりたい」というニーズに転換させることに成功しました。商品の特性とニーズを正しく捉え、伝え方ひとつを変えるだけでも、それまでは対象外であった層からの顧客やリピーターを獲得できるのです。