左侧广告
右侧广告

コラム

コラム

Column

Buddieateのアプリなら毎週更新される最新ブログを無料で読めます!

アプリをダウンロード

2025/05/14(WED)

スタッフブログ

AOKIのスーツサブスクサービスの失敗

こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「AOKIのスーツサブスクサービスの失敗」についてお話します。AOKIが2018年に開始したスーツのサブスクリプションサービス「suitsbox」はサブスク型ビジネスが注目を集める中で生まれた、アパレル業界における新たな挑戦でした。月額7,800円でスーツ、シャツ、ネクタイの3点セットをレンタルでき、返却は自宅から行えるという利便性を打ち出し、所有から利用へと価値観が変化しつつある若年層のビジネスパーソンをメインターゲットにしていました。AOKIが狙ったのは、スーツを着用する頻度が少ない人や、クールビズやオフィスカジュアルといった職場環境の変化に対応した「必要なときだけスーツを着る層」でした。また、出張が多い人や、初めて就職する新社会人、あるいは服装にこだわりたいが収納スペースに限りがある都市部の単身者など、サブスクならではの柔軟性を求める層への訴求も狙っていました。

しかし実際には、こうしたターゲット層への浸透には至らず、サービスの主な利用者は40代以上の男性が中心でした。これはAOKIの実店舗における既存顧客層と重なっており、結果的にsuitsboxが新たな市場を開拓するというよりも、既存の購買需要を食い合う構図となってしまいました。サブスクサービスによってスーツ購入が減少すれば、収益にも影響が出るため、AOKIにとっては痛手となる事態でした。さらに、スーツのサブスクモデル自体にも多くの課題がありました。複数サイズ・複数スタイルのスーツを常時ストックし、かつ顧客のサイズや好みに応じたセットを迅速に提供するためには、非常に緻密でコストのかかるオペレーションが求められました。返却されたスーツはクリーニングし、品質管理を行い、ある程度の数のスーツを常に再出荷可能な状態にしておく必要があり、この一連の作業には人件費と時間がかかることになりました。
また、着用によるダメージや劣化具合が異なる中古衣類の在庫をどのように回すかという問題にも常に向き合わされ、運営を続けるために多くの労力を費やすことになりました。suitsboxのサービスを維持するコストがかさむ一方で、会員数の伸びは鈍く、収益の見込みも立たなくなっていきました。また、スーツという商品の性質上、レンタル利用に対する心理的な抵抗もあったとの指摘もあります。長らく新品での購入が前提とされてきたビジネスウェアを、他人が使ったものとして受け取るという点に、清潔感やイメージの面で違和感を覚える方もいました。

こうした背景を受け、suitsboxは開始からわずか半年後の2018年11月にサービス終了を発表しました。suitsboxの誕生でスーツ業界に新たなサービス形態が普及すると思いきや、わずか数か月での撤退という短命に終わったことで、業界内外に一定の衝撃を与える結果となりました。

この失敗の本質は、サブスクリプションという形式そのものにあるというよりも、それを用いて「どんな顧客の、どんな課題を解決するのか」が不明確だった点にあると考えられます。各業界で利用され始めたサブスクリプションサービスという手法を採用したものの、自社の資源やブランドとしての強みとの適合性、そして何より市場のニーズとの接点が十分に検討されていなかったことが、短命に終わった要因と言えます。suitsboxの事例は、流行しているサービス形態が必ずしも成功をもたらすわけではなく、需要と供給に対する理解と戦略設計が不可欠であることを改めて浮き彫りにしたものだといえます。新規性だけではなく、地に足のついた運用設計がなければ、持続的な価値を提供するのは難しいということが読み取れる事例です。

ぜひ一緒にCreateしましょう!

お問い合わせ