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こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「AOKIのスーツサブスクサービスの失敗」についてお話します。AOKIが2018年に開始したスーツのサブスクリプションサービス「suitsbox」はサブスク型ビジネスが注目を集める中で生まれた、アパレル業界における新たな挑戦でした。月額7,800円でスーツ、シャツ、ネクタイの3点セットをレンタルでき、返却は自宅から行えるという利便性を打ち出し、所有から利用へと価値観が変化しつつある若年層のビジネスパーソンをメインターゲットにしていました。AOKIが狙ったのは、スーツを着用する頻度が少ない人や、クールビズやオフィスカジュアルといった職場環境の変化に対応した「必要なときだけスーツを着る層」でした。また、出張が多い人や、初めて就職する新社会人、あるいは服装にこだわりたいが収納スペースに限りがある都市部の単身者など、サブスクならではの柔軟性を求める層への訴求も狙っていました。

しかし実際には、こうしたターゲット層への浸透には至らず、サービスの主な利用者は40代以上の男性が中心でした。これはAOKIの実店舗における既存顧客層と重なっており、結果的にsuitsboxが新たな市場を開拓するというよりも、既存の購買需要を食い合う構図となってしまいました。サブスクサービスによってスーツ購入が減少すれば、収益にも影響が出るため、AOKIにとっては痛手となる事態でした。さらに、スーツのサブスクモデル自体にも多くの課題がありました。複数サイズ・複数スタイルのスーツを常時ストックし、かつ顧客のサイズや好みに応じたセットを迅速に提供するためには、非常に緻密でコストのかかるオペレーションが求められました。返却されたスーツはクリーニングし、品質管理を行い、ある程度の数のスーツを常に再出荷可能な状態にしておく必要があり、この一連の作業には人件費と時間がかかることになりました。

また、着用によるダメージや劣化具合が異なる中古衣類の在庫をどのように回すかという問題にも常に向き合わされ、運営を続けるために多くの労力を費やすことになりました。suitsboxのサービスを維持するコストがかさむ一方で、会員数の伸びは鈍く、収益の見込みも立たなくなっていきました。また、スーツという商品の性質上、レンタル利用に対する心理的な抵抗もあったとの指摘もあります。長らく新品での購入が前提とされてきたビジネスウェアを、他人が使ったものとして受け取るという点に、清潔感やイメージの面で違和感を覚える方もいました。

こうした背景を受け、suitsboxは開始からわずか半年後の2018年11月にサービス終了を発表しました。suitsboxの誕生でスーツ業界に新たなサービス形態が普及すると思いきや、わずか数か月での撤退という短命に終わったことで、業界内外に一定の衝撃を与える結果となりました。

この失敗の本質は、サブスクリプションという形式そのものにあるというよりも、それを用いて「どんな顧客の、どんな課題を解決するのか」が不明確だった点にあると考えられます。各業界で利用され始めたサブスクリプションサービスという手法を採用したものの、自社の資源やブランドとしての強みとの適合性、そして何より市場のニーズとの接点が十分に検討されていなかったことが、短命に終わった要因と言えます。suitsboxの事例は、流行しているサービス形態が必ずしも成功をもたらすわけではなく、需要と供給に対する理解と戦略設計が不可欠であることを改めて浮き彫りにしたものだといえます。新規性だけではなく、地に足のついた運用設計がなければ、持続的な価値を提供するのは難しいということが読み取れる事例です。

こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「シャボン玉石けんの香害への取り組み」についてお話します。シャボン玉石けん株式会社は、人工香料による健康被害、いわゆる「香害」への対策を通じて、企業理念に基づいた独自の市場を切り拓いています。香害とは、柔軟剤や洗剤、香水などに含まれる合成香料の香りが、周囲の人にとって不快感をもたらしたり、頭痛・吐き気・呼吸困難などの体調不良を引き起こしたりする現象のことを指します。特に、化学物質過敏症を抱える方にとっては深刻な健康リスクとなっており、社会的な理解と配慮が求められています。

同社は、創業以来「無添加・無香料」にこだわり続けてきた歴史を持ちます。そのため、香害という新たな社会課題に対して自社製品を作り替えるまでもなく、すでに確立された製品や製造技術、ブランディングをそのまま活用することができました。
多くの場合、新規事業には新たな設備投資や研究開発が付き物ですが、この例は従来の事業の延長線上にあったためそれらを実施する必要が少なかったのです。その結果、広報や啓発活動に力を入れることが可能となり、社会課題に対して誠実に向き合う企業としての姿勢が際立ちました。
2024年には「香害の認知率が79%、香料により体調不良を経験した人が43%」という調査結果を公表し、香害の実態を可視化しました。単なる製品展開にとどまらず、社会的な気づきを促す活動として、化学物質過敏症の当事者をサポートするマークの制作・配布も実施しています。これにより、従来のナチュラル志向層に加え、香料に悩む新たな顧客層からの支持も獲得しつつあります。

また、無添加石けんを使用したコインランドリー事業も注目されています。香料の残留を避けたいというニーズに応えたこの新事業は、乳幼児や敏感肌を持つ家族を対象にした市場だけでなく、医療・介護施設、公共施設といった法人向け市場への展開も期待されています。実際、無添加石けんのコインランドリーを「利用したい」と考える人は38%にのぼり、新しいライフスタイル提案としての可能性を秘めています。

このような取り組みを通じて、シャボン玉石けんは単に「香らない石けん」を販売しているのではなく、「香りのない快適さ」という新しい価値観を社会に提示しています。多数の企業が香りを「付加価値」として競い合う中で、あえて香らないことを選ぶ戦略は、差別化とブランド強化の両面で機能しています。
さらに、香害対策を通じて社会的責任を果たす姿勢は、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsといった現代的な企業評価軸とも親和性が高く、企業価値の向上にもつながっています。

香害という繊細な問題に対して、製品・啓発・サービスの三方向からアプローチすることで、シャボン玉石けんは企業の原点と伝統を守りながらも新たな成長軸を確実に手に入れようとしています。

皆さん、こんにちは。Buddieateスタッフの石堂です。 今週は映画のチケットがなんと1枚4,500円という驚きの映画館「109シネマズプレミアム新宿」についてご紹介します。
皆さんは最近、映画館に足を運びましたか?この記事を執筆している日は、ちょうど名探偵コナンの最新作の公開日なので、近日中に映画館へ鑑賞しに行こうと考えている方もいるのではないでしょうか?

さて、映画館での鑑賞は臨場感があってとても魅力的ですが、最近はチケット代が1枚2,000円前後と高く、気軽に通うのはなかなか難しいという方も多いかもしれません。2,000円あれば、動画配信サービスに1〜2ヶ月加入できる金額ですから、「どうせ観るなら配信開始まで待って、家でのんびり観よう」という選択も十分に合理的です。

そんな中、ひときわ高価格帯の映画体験を提供しているのが、「109シネマズプレミアム新宿」です。ここでは、チケット価格が「CLASS A」4,500円、「CLASS S」6,500円と一般的な映画館の約2〜3倍の価格設定となっています。正直、最初にこの価格を見たときは驚きました。ですが、この価格には明確な“体験価値”が含まれているのです。
「109シネマズプレミアム新宿」は、単なる映画鑑賞の場ではなく、“記憶に残る上質な時間”を提供することに重点を置いています。以下のような特別なサービスが含まれています。

① ポップコーン&ソフトドリンク付き
② 上映1時間前からラウンジの利用が可能
③ CLASS Sのチケットには、鑑賞後に利用できるプレミアムラウンジ&ウェルカムドリンクのサービスも

座席も特別仕様で、1シアターあたりの席数を大幅に絞り込み、各席には通常の約2.3倍のスペースが確保されています。リクライニング機能を搭載した快適なシートで、足を伸ばしてゆったりと映画を楽しめます。さらに、スクリーンは前方だけでなく、左右の壁面にも映像が投影される3面ワイドビュー「ScreenX」を採用されており、立体音響システムと合わさり、没入感あふれる映画体験を提供しています。

動画配信サービスが主流となった現代において、あえて映画館に足を運ぶ理由は何でしょうか。それは「ただ観るだけ」では得られない、その場でしか味わえない体験に価値を感じているからではないでしょうか。109シネマズプレミアム新宿のような映画館は、モノを消費するのではなく、思い出や時間そのものに価値を感じる「コト消費」の流れと非常に相性が良いと感じます。

皆さん、こんにちは。Buddieateスタッフの石堂です。 今週は、はとバスツアーの戦略についてお話します。
はとバスの定期観光バスは1949年「東京半日Aコース」から始まりました。その後、経済成長の波に乗ってレジャーブームが到来し、はとバスツアーのラインナップも増えていきました。特徴的なコースとして、1956年には周遊に加え観劇を加えた「観劇Hコース」、1958年には空から東京を観光する「陸海空立体Lコース」の運行が始まりました。

現在でも、はとバスツアーの多くは東京観光のコースとなっています。そのため、関東以外の地域に住む方が多く利用することが考えられます。私自身、東京出身なのですが、はとバスツアーは私には関係ないモノだと考えていました。しかし、はとバスツアー利用客の4割は関東圏の方が占めているのです!東京から近いエリアに住んでいる方や、東京在住の方がこれほどまではとバスツアーに参加するのはなぜなのでしょうか?

はとバスツアーの東京観光コースには半日・短時間コースなるものがあります。これらのコースは最短1時間から観光することができます。そのため、別の用事がある方でもスキマの時間で観光を楽しむことができます。
さらに、はとバスツアーは単なる観光サービスにとどまらず、顧客のニッチな需要を満たすことで高い満足度を獲得しています。例えば、東京都内に住む方の中には、普段あまり車を運転しない、あるいはそもそも車を所有していない方も多くいます。そうした方々にとって、首都高速道路からの景色をゆっくりと楽しむ機会は意外と少ないものです。
はとバスは、その点に着目し、夜景ツアーや昼間のパノラマ観光ツアーなど、首都高速を利用するルートを組み込んだプランを提供しています。たとえば、「東京タワーとレインボーブリッジ夜景ツアー」では、ライトアップされた東京の街並みを高い視点から楽しむことができます。これにより、普段は地下鉄やバス移動が中心の都民にとっても、新鮮な体験を提供できるのです。

加えて、はとバスはコースの種類を非常に豊富に用意することで、リピーターの獲得にも成功しています。観光名所を巡るスタンダードなツアーだけでなく、グルメツアーや期間限定イベントに合わせたツアー、さらには体験型ツアーなど、何度利用しても飽きさせない多様なラインナップが用意されています。たとえば、老舗レストランを巡るグルメツアーや、東京の最新スポットを回るツアーなど、興味に応じて選ぶことができるため、一度利用した人が「次は別のコースに参加してみたい」と思える仕組みが整っています。

このように、はとバスツアーは「普段体験できない景色や雰囲気を楽しむ」「豊富な選択肢で何度でも楽しめる」という付加価値を提供することで、多様なニーズに応えているのです。

皆さん、こんにちは。Buddieateスタッフの石堂です。 今週はPOSAカードの革新性についてお話します。
POSAカードという言葉を聞いたことがありますか?ほとんどのコンビニでは入口すぐ横あたりにAmazonやNetflixなどのプリペイドカードが陳列されており、それこそがPOSAカードです。POSAカードはインコム・ジャパン株式会社によって開発されました。POSAカードの登場は国内のプリペイドカードの普及を加速させ、これまでに企画・流通されたPOSAカードは3000種類を超えています。

POSAとは”Point Of Sales Activation”(販売地点有効化)の略称です。これはどういう意味なのかといいますと、「レジでお金を払うことで初めて使えるようになる」ということです。具体的なPOSAカードの仕組みは次のようになっています。まず、POSAカードをレジに通すと購入情報がインコム・ジャパン株式会社を通して、各発行会社に送られます。その後、発行会社から有効化の情報がお店のレジに送られてきます。この間わずか数秒間です。有効化されて初めてPOSAカードは価値を持つのです。

POSAカード登場以前、国内でプリペイドカードは普及していませんでした。その理由は、小売店でプリペイドカードを扱うリスクが大きいからです。プリペイドカードそのものに現金と同じ価値があるため、販売時には盗難の恐れがあるので置く場所に注意し、閉店後には金庫に戻さなければいけません。さらに、仕入れの時はプリペイドカードをまず現金で購入する必要があるため、カードが在庫を抱えると損失となってしまいます。
そのようなプリペイドカードを取り巻く問題をPOSAカードが解決しました。POSAカードはレジを通し有効化されることが初めて価値を持つため、カードそのものには価値がありません。そのため、カードの保管や盗難防止に苦慮することがなくなり、入口から一番近いところに陳列することもできるようになりました。さらに、カード自体には価値がないため、在庫を抱えても全く問題がありません。

POSAカードは国内62000店舗以上で取り扱われており、さらに視認性の高い場所に陳列されていることが多いため、露出アップによるブランド認知の向上という点で企業にメリットを与えています。そのためPOSAカードは「広告」「商品」「決済」という3つの要素を併せ持ったソリューションなのです。

こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「パソコンのマウスが売れ続ける理由」についてお話しします。
パソコンのタッチパネルなどが誕生する前、パソコンの操作は主にマウスとキーボードに依存していました。マウスは、画面上のカーソルを正確に操作するための主要なデバイスであり、特にデスクトップパソコンでは欠かせない存在でした。マウスの操作性は高く、細かい作業や長時間の使用にも適していました。しかし、ノートパソコンの普及とともに、タッチパネルやタッチパッドが登場しました。これらのデバイスは、マウスを使わずに指先で直接操作できるため、持ち運びやスペースの節約に優れています。特に、タッチパネルはスマートフォンやタブレットの普及により、ユーザーにとって馴染み深い操作方法となりました。このようにパソコンの操作方法は、時代とともに進化し、ユーザーはより直感的にパソコンを操作できるようになりました。しかし、それにもかかわらず、マウスは依然として多くのユーザーに愛用されています。なぜでしょうか?

現在でもマウスが売れ続ける理由のひとつに、「精密な操作性」が考えられます。マウスは、細かい操作や精密な作業において優れた性能を発揮します。例えば、グラフィックデザインやプログラミングなど、正確なカーソル操作が求められる作業には欠かせません。2つ目の理由は「長時間の使用に適している」ということです。 マウスは手に馴染みやすく、長時間の使用でも疲れにくい設計がされています。特に、エルゴノミクスデザイン(人間工学に基づいたデザイン)のマウスは、手首や腕への負担を軽減するため、多くのユーザーに支持されています。3つめは「カスタマイズ性の高さ」です。 マウスは、ボタンの数や配置、感度などをカスタマイズできるため、ユーザーのニーズに合わせた設定ができます。これにより個々人がパフォーマンスを最高にするための調節が可能になり、作業効率の向上と快適な操作が実現します。

他にも、用途によってはマウスがタッチパネルなどと比較して高い優位性を示す場合があります。例えばゲーミングマウスは、高速かつ正確な操作が求められるゲームプレイにおいて必須のデバイスです。多くのゲーマーは、タッチパネルやタッチパッドでは得られない操作性を求めて、専用のゲーミングマウスを使用しています。
タッチパネルやタッチパッドの導入により、パソコンの操作方法は多様化しましたが、マウスは依然として多くのユーザーにとって重要なデバイスであり続けています。その理由は多岐にわたっており、またそれぞれの目的に適した専用のマウスもあります。これからも、マウスはパソコン操作の重要な一翼を担い続けることでしょう。

皆さん、こんにちは。Buddieateスタッフの石堂です。今週は紳士服業界の異業種進出についてお話しします。
紳士服業界は、かつてオーダーメイドが主流でしたが、既製服の大量生産が進むことで市場が急拡大しました。
特に1980年代以降はバブル景気の影響を受け、スーツの需要が急増。1992年には国内のスーツ販売数が約1,350万着に達し、業界は最盛期を迎えました。
しかし、その後の経済の低迷、カジュアルファッションの普及、リモートワークの増加などの影響により、スーツの需要は年々減少。2020年には年間販売数が約400万着となり、ピーク時と比較して約7割の減少となりました。
こうした環境の変化に対応するため、紳士服業界は新たな収益源を模索し始めました。

現在、紳士服業界は「青山商事」と「AOKIホールディングス(AOKI HD)」の2強体制と言っても過言ではありません。
2023年3月期の決算を見ると、売上高ではAOKIが青山にわずかに及ばなかったものの、営業利益ではAOKIが青山の約15倍という大差をつけています。同じ業界に属しながら、なぜこれほどの差が生じたのでしょうか?

AOKIの圧倒的な営業利益の背景には、不動産の有効活用があります。AOKIは現在、国内に498店舗を展開しており、多くの店舗が幹線道路沿いなどの好立地に位置しています。この資産を活かし、AOKIは以下のような異業種展開を進めました。

・カラオケ事業:「コート・ダジュール」
・複合カフェ事業:「快活CLUB」
・フィットネス事業:「FiT24」

特に「快活CLUB」は、全国に500店舗以上展開し、複合カフェ業界でトップのシェアを誇るほど成長しており、スーツ需要の減少による影響を大幅に補っています。
AOKIはこうした異業種への参入を進めることで、紳士服業の売上減をカバーし、安定した収益を確保することに成功しました。

一方、青山商事も不採算店舗の活用策を模索しており、
・100円ショップ「ダイソー」(大創産業とのフランチャイズ契約)
・焼肉チェーン「焼肉きんぐ」(物語コーポレーションとの提携)

といった業態転換を進めています。しかし、これらはフランチャイズ契約に基づく事業展開のため、高額なロイヤリティが発生し、利益率を押し下げる要因となっています。
対照的に、AOKIはすべて自社運営で異業種事業を展開しているため、利益率の高さが際立っています。

紳士服業界は今後も厳しい市場環境に直面することが予想されます。しかし、AOKIのように異業種への本格的な進出を成功させれば、新たな成長の道を切り開くことができるでしょう。青山商事もフランチャイズ頼みの戦略から脱却し、より自社の強みを活かした事業展開を図ることが求められると考えます。

こんにちは。Buddieateスタッフの福島です。本日は「抱き合わせ販売の成功例と失敗例」についてお話します。 抱き合わせ販売は、企業が売上を伸ばすための有効な手段として広く利用されています。しかし、その一方で、独占禁止法に抵触するリスクも伴います。本日は、違法とされた事例と合法とされた事例を紹介し、理想的な抱き合わせ販売を実現するためのポイントを探ります。

【違法とされた事例: ドラゴンクエストⅣの販売】
1990年に発売された『ドラゴンクエストⅣ』は、非常に人気のあるゲームソフトでした。この人気を利用して、卸売業者は『ドラゴンクエストⅣ』を他の売れ残りのゲームソフトとセットで販売しました。この抱き合わせ販売は、消費者が不要な商品を購入せざるを得ない状況を作り出し、商品選択の自由を妨げるものでした。結果として、公正取引委員会から独占禁止法違反とされ、排除措置命令が下されました。

【合法とされた事例: パソコンとオペレーティングシステムのセット販売】
一方、パソコンとオペレーティングシステム(OS)のセット販売は、一般的に合法とされています。例えば、マイクロソフトはパソコンメーカーと契約し、ExcelとWordをプレインストールまたは同梱しました。この場合、消費者はパソコンを購入する際に必要なソフトウェアも同時に手に入れることができ、利便性が向上します。このようなセット販売は、消費者の選択肢を広げ、競争を促進するため、違法とはされませんでした。

紹介した2つの事例から考えると、抱き合わせ販売を行う際は消費者にとって有益な組み合わせであることが重要です。
例えば、パソコンとOSのセット販売のように、消費者が実際に必要とする商品を組み合わせることで、満足度を高めることができます。また、抱き合わせ販売を行う際には、消費者に対して透明性を持って説明することが重要です。どのような商品がセットになっているのか、個別に購入することが可能かどうかを明示することで、消費者の信頼を得ることができます。
そして、抱き合わせ販売が独占禁止法に抵触しないよう、事前に法的なアドバイスを受けることも推奨されます。

抱き合わせ販売を行う前に市場調査を実施し、消費者のニーズを把握することも売り上げ向上に繋がるでしょう。これによって消費者が求める商品を適切に組み合わせることができます。むしろ調査を行わずに企業の都合だけで抱き合わせ販売の組み合わせを作ってしまうと、ドラゴンクエストⅣの事例のような事態を引き起こすリスクがあります。
抱き合わせ販売は、適切に活用すればビジネスにおいて大きなメリットをもたらします。法的リスクを十分に理解し、消費者に不利益を与えない形での販売を心がけることも求められます。

皆さん、こんにちは。Buddieateスタッフの石堂です。今週は偶然から生まれた「タニタ食堂」についてお話します。

皆さんは「タニタ食堂」という飲食店をご存じですか?タニタ食堂は全国に3店舗(東京、奈良、福岡)展開しているほか、スーパーやコンビニなどではタニタ食堂が監修した食品も販売されています。「タニタ食堂」を展開している株式会社タニタは、元々体重計や活動量計、体組成計などの健康機器を製造・販売するメーカーでした。ではなぜ、製造業から遠く離れた飲食業に進出したのでしょうか?

「タニタ食堂」のルーツは、タニタの一風変わった社員食堂にあります。タニタの社員食堂の献立には4つのルールがありました。

1.「メニューは日替わりのみで、主菜、副菜2品、汁物、ご飯で構成する定食スタイル。」
2.「1食あたり500kcal前後」
3.「野菜は1食あたり150〜200g使用」
4.「塩分は1食あたり3.0g以下」

そんな社員食堂がNHKの「サラリーマンNEO」という番組内の「世界の社食から」というコーナーで取り上げられたことが、「タニタ食堂」事業のきっかけとなりました。その番組を見ていた出版社からレシピ本出版のオファーを受け、タニタは「体脂肪計タニタの社員食堂」というレシピ本を出版しました。タニタとしては、社員食堂のレシピ本がさほど売れるとは想像していなかったようですが、結果的にそのレシピ本はシリーズ4冊が出版され、累計542万部を売り上げるベストセラーとなりました。

レシピ本の売り上げが100万部を超える頃から、「タニタの社員食堂のメニューを食べてみたい!」「どこであのメニューを食べられるか?」といった問い合わせが相次ぐようになり、そこで飲食業への進出を決意したそうです。

また、タニタは「タニタ食堂」の成功から、さらに一歩踏み込んだ「タニタカフェ」という事業も始めました。「タニタカフェ」では、野菜をたっぷり使うことでタニタらしいヘルシーさを出しながらも、カロリーや塩分などはタニタ食堂の基準にとらわれないメニューを展開するなど、食事の楽しさや心地よさを重視し、健康への関心の高さによらずにさまざまな人に利用してもらえる店舗を目指しています。
なぜ、タニタのこだわっている献立の4つのルールにとらわれないメニューを展開するようになったのか?それはタニタの社長である谷田千里氏の体験から来ています。タニタ食堂がローソンのお弁当を監修した時、発売日当日に監修したお弁当を購入するお客さんをチェックしていた同氏は、工事関係の仕事をしているであろうお客さんがタニタのお弁当とカップ麺を同時に購入する場面を目撃したそうです。そこで同氏は、サービス業に進出した以上、さまざまな客層に対応したメニュー提供をすべきだということに気が付き、「タニタカフェ」ではカロリーや塩分などはタニタ食堂の基準にとらわれないメニューを展開しています。

タニタは偶然から飲食業という未知の業界に進出し、「健康を『はかる』」会社から「健康を『つくる』」会社へと変化し、健康総合企業として大きな躍進を遂げました。
新規事業への進出は、企業を大きく成長させるための重要なステップです。タニタのように、偶然や意外なヒントから新たなビジネスチャンスが生まれることもあります。もちろん、新規事業にはリスクが伴いますが、その先には大きな可能性があります。

例えば、現在の事業に関連する新たな分野へ挑戦することで、既存の技術やノウハウを活用できます。また、新規事業は市場の変化に対応しやすい柔軟な経営体制を構築する機会にもなります。さらに、新たな分野で成功を収めることで、企業ブランドの向上や従業員のモチベーションアップにもつながります。
タニタの成功は、自社の強みを活かしつつ、時代のニーズを的確に捉えた結果です。中小企業にとっても、既存の事業にこだわらず柔軟な発想で新規事業を模索することが成長の鍵となるでしょう。

皆さまの会社でも「新しい一歩」を踏み出してみませんか?どんな小さなアイデアでも、それが将来の大きな成功へとつながる可能性を秘めています。まずは、社員のアイデアを募る社内ワークショップの実施や、市場調査から始めてみるのはいかがでしょうか。